アメリカのボストンに住む筆者が、日々感じる日本とアメリカの教育の違いや発見をつづります。今回はアメリカのお金の教育は日本に比べて進んでいるのか?ということです。
子どもの将来の安定的な家計のため、今親である私たちがお金の勉強に積極的になることが大切です。正しい知識を得ることで、お金に関するリスクを避けることが出来るからです。実際ここアメリカでは、大人から子どもへ与えられるお金の教育は大きな意味を持っています。
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日本とアメリカの投資の違い
みなさんは、家庭の資産を順調に増やしていくためにどんなことをしていますか?働いて稼いだお金を節約し、貯金をしていますか?または不動産や株式を購入して投資していますか?
人によって色々な考えや方法があると思います。
一つ確実に言えるのは、今後、安定的な家計を作っていくには、投資をすることは欠かせなくなっているということです。
金融庁の発表したレポートによると「日本の家計金融資産の伸びはアメリカのそれに比べて低い」のだそうです。
家計金融資産とは・・・家庭が持つ金融資産全てのこと(現金・預金・株式・生命保険・年金など)
1995年から2016年までの20年間で比較すると、アメリカは3.3倍の増加率に対し、日本は1.5倍だったとのこと。この差は投資に回す資産の割合の違いによるものとされ、日本でも投資の普及と促進が必要とレポートされています。
【参考】平成28事務年度金融レポート https://www.fsa.go.jp/news/29/Point2017.pdf
P.7「顧客本位の業務運営の確立・定着等を通じた家計の安定的な資産形成
日本人が投資に消極的なのは「お金の運用に関する教育を受ける機会が少なかったからだ」という意見を数多く目にします。そのような意見にはたいていの場合「一方欧米では金融教育が盛んだ」ということもあわせて言われています。
さて、ここで本当にアメリカのお金の教育が進んでいるかどうかですが「学校でお金の教育はそんなに受けていないない」というのが私の実感です。ここボストンで子どもたちの小学校教育をみている限りでは、お金の勉強が日本より進んでいるという印象は受けません。算数の授業でお金の種類(コインや紙幣)について学ぶことはありましたが、同様のものは日本の算数でも学びます。
今回調べてみてわかったのですが、ボストンのあるマサチューセッツ州は、アメリカの中ではお金の教育において遅れをとっている州の一つのようです。
2015年時点で、全米のうち12の州が小中高での金融教育を義務づけていませんでした。そのうちの一つがマサチューセッツ州。
アメリカは日本と違い、教育内容は州によって決定することになっているので、このように違いが生まれています。
先述したように、欧米の人々が進んだ金融教育を受けているから家計資産の投資へのバランスが良いと言うのであれば、一見するとマサチューセッツの人たちは当てはまらないような気がします。
しかし、学校の現場ではお金の教育に対して積極的でないマサチューセッツでも、多くの人は資産の半分近くを投資に回し、家計を成長させています。なぜこの地域の人たちも日本人のように、投資に消極的にならないのでしょうか。
私なりに導き出した答えは『大人のお金の教育が進んでいるから』というものです。
大人のお金の教育とは
①アメリカではお金のことは親や家族から教わる
②成長してから自分でお金の勉強をした
日本人とは異なる考えでお金に向き合っているアメリカ人。そうなっている理由はどこにあるのか、どのようにお金の増やし方を学んできたのか地元の人たちに聞いてみました。
すると、大きくわけて二通りの答えを得られました。
①アメリカではお金のことは親や家族から教わる
この地域にはアイリッシュ系やイタリア系のアメリカ人が多く、彼らの持論として『資産は3世代かけて培うもの』という考えがあるそうです。これは、1世がアメリカへ移民としてやってきて、その子どもから孫までかけて一族の資産を大きくしていくという考え方です。
身近な例では、私の家の大家さんはイタリア系アメリカ人で、父親(1世)と娘(2世)の共同名義で大家となっています。世代で収入をきっちりわけてしまうのではなく、一族で資産を運用していくという形の現れだと思います。また、大家さんは父親(1世)がこの夏から大学生になる孫の学費の援助をするということも言っていました。
親世代が金銭面で支援できるだけして、子どもや孫世代の教育や将来へ投資するという考えなのかもしれません。
別のママ友は、子どもの頃の話をしてくれました。有名なボードゲームのモノポリーを家族でよくやり、そこでお金への教養や正しい投資方法を親から教わった気がすると彼女は言っていました。モノポリーは、不動産投資をしたり借金をしたりする場面がある人生ゲームのようなボードゲームです。彼女はよく父親から「ここでこの不動産を買わないなんて、お金をドブに捨てるようなものだよ!」とアドバイスされたと笑いながら教えてくれました。そのころから、手元に多すぎるお金を置いておくことは、リスクになることもあると知っていたと言っていました。
②成長してから自分でお金の勉強をした
成長してから、というのは高校生の頃から大人になった現在という意味で、若い学生などに向けて作られたアプリやサイト、サービスを使う機会があったとのことでした。お金に関する勉強を提供するサービスは、民間や公的なタスクフォースが立ち上げたものが多くあり充実しています。知識の少ない若者でも楽しんでできるようにデザインされているので、親や学校から紹介されてやってみたという人が多いのが印象的です。
例えば、金融業のVISAとアメリカンフットボールのNFLが共同で作った【Financial football】という無料の学習ツールがあります。アメフトをプレイするゲームで、スピード感があり初心者に向いているとの口コミから興味がわいたので、実際にやってみました。アメフトのプレイ中に出題されるクイズにより、初めて得る知識とそのゲーム性で、ついついプレイを続けてしまう面白さでした。
https://www.financialfootball.com オンラインプレイ可(Chrome, Edge, Firefox)
若い人が興味をもちやすいサービスが充実しているうえに、大人も気軽にアクセスできる勉強方法は多く、大学が無料で提供しているようなコースもあります。大人向けの金融リテラシーのサービスは日本よりも充実している印象です。
二つの答えとも、大人や親の介入が欠かせないのがわかります。親は知識に自信を持っているからこそ子どもに伝えることができるし、色々な勉強のコンテンツにもアンテナを張っています。
大人が関心を持つことが一番大事
我が家の小学生たちが、日本よりも進んだお金の勉強を受けているかと言えば、答えはノーとなります。しかし周りのアメリカ人を見る限り、お金の勉強に対して無関心ではありません。家庭で親から学んだり、ある程度の年齢になるとプロのサービスを使ってみたりしています。
子どもの将来の資産のためを考えたとき、一番大事なのは親がお金の勉強や教育に関心を持つこと。よくわからないから放置するのではなく、しかるべき時に子どもを導けるように大人が知識を得ておくことが必要なのだと感じます。こちらもぜひ!いよいよ日本は貧しくなり始めている【お金の教育No.5】
YouTubeで解説動画を公開中!
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