preloader

子どもと考える投資教育【お金の教育No.19】

はじめに

「投資教育」と聞くと、「お金にすごく余裕がある家のすることでしょ?」とか「投資で損をするのはイヤだな・・・」と感じる人も多いかと思います。

しかし、生きていく上で不安の多い世の中だからこそ、投資教育は誰にでも必要になっているのです。投資の勉強は大人だけに限らず、むしろ子ども達にとってもより重要なのです。なぜなら単にお金の知識を得るだけではなく、お金を通して自分と社会のつながり・世の中のしくみを知り、働いてくれる家族のありがたみとお金の大切さも学ぶことにもなるからです。

この記事では、
・なぜ今、投資教育が必要なの?
・投資ってどういうこと?
・投資にはどんなものがあるの?
・子どもと考える投資教育

についてわかりやすくご紹介します。丁寧にご説明しますので、ぜひ参考にして下さい。

なぜ今、投資教育が必要なの?

近年、投資教育が特に注目されている理由は大きく3つあります。

①年金受給額が減っているから
②預貯金だけでは、お金は増えないから
③寿命が長くなり「老後」が長いから

①年金受給額が減っているから

日本の年金制度は、「賦課(ふか)方式」です。

厚生労働省のホームページにも以下の様に記載があります。

≪公的年金制度は、いま働いている世代(現役世代)が支払った保険料を仕送りのように高齢者などの年金給付に充てるという「世代と世代の支え合い」という考え方(これを賦課方式といいます)を基本とした財政方式で運営されています≫

(厚生労働省ホームページ参照:https://www.mhlw.go.jp/topics/nenkin/zaisei/01/01-02.html)

つまり、自分が払った保険料を貯めておいて将来受け取るという仕組みではありません。

私たちが将来受け取る年金は、今の子どもたちが大人になった時に支払う保険料で賄われることになるのです。

現在の日本においては、年金を積み立てる人(若年者)が減り、年金を受け取る人(高齢者)が増えています。少子高齢化が加速する日本において、このままでは今後の年金受給額が減っていくことは、目に見えています。

②預貯金だけでは、お金は増えないから

2021年5月現在、大手都市銀行の普通預金の金利は、0.001%です。

これは、例えば100万円を1年間預けても、利息は10円しかもらえないということです。銀行にお金を預けているだけでは、ほとんど利益を生まないことがよく分かると思います。

何十年も前のいわゆる「バブル経済」の時代には、普通預金の利率も大変高く「10年預ければ、倍になる」と言われたこともありましたが、今はもうそういった時代ではありません。

③寿命が長くなり「老後」が長いから

日本人の平均寿命は、男性が81歳、女性が87歳です。ここ30年で比較しても平均寿命は男女ともに5年以上長くなっています。

これは65歳の定年まで働いても、20年以上「老後の生活」が待っているということです。元気に長く生きていくためには、もちろんそれなりのお金も必要になります。「老後2,000万円問題」という言葉をニュースなどで耳にした方も多いはずです。「長生きのリスク」という言葉も聞くようになりました。

先ほど、年金受給額が減っていくという説明をしましたが、老後資金を年金だけに頼るのは不安要素が多いと言えるのです。

(厚生労働省ホームページ参照:統計情報「令和元年簡易生命表の概況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life19/index.html)

これらの理由から、お金は普通預金に預けるだけ、老後資金は公的年金に頼るだけ、という備え方では将来的に大きな不安が残るのです。

では、どうしたら良いのでしょうか。

投資の種類と特徴

そこで考えたいのが、「投資」です。

「投資」とは、利益が出ることを期待して資産(お金)を運用することをいいます。具体的には、株式の売買や保険への加入などがあります。預貯金とは違い、基本的には元本が保証されていないのが特徴で、増えることも、逆に減ることもあります。

では実際の投資にはどんな対象があるのでしょうか。投資の対象である金融商品は多数ありますが、ここでは基本となる3つの金融商品とそれぞれのメリットとデメリットを解説します。

①株式

「投資」と聞いてまず思い浮かぶのはこの「株(株式)」ではないでしょうか。

株式とは株券とも言い、株式会社にお金を出資した証明として発行されます。会社が資金を調達するために株式を発行し、私たちがそれを購入することでその会社の株主になります。株価(株の値段)が安い時に買って、高くなった時に売ればその差額を利益にできます。

株式の買い方と売り方については、MY SCHOOLの「証券会社の役割とは?」の記事でも少し紹介しましたのでそちらも読んでみて下さいね。

メリット
・株価の値上がりによる売却益が得られる
・その会社が利益を出した場合、配当が還元されることもある
・株主優待が受けられるものもある

デメリット
・元本が保障されていない
・投資先に関する知識が必要
・まとまった金額の元手が必要な場合が多い
・売りたい時に取引が成立しないなど、流動性が低くなることもある

参考:「投資商品の種類がわかる!マイナー商品とメジャー商品のリスクを解説」ZUU online https://zuuonline.com/archives/229334

この記事では「資産運用」の視点で株式をご紹介していますが、お子さんと勉強される際には、株式会社が作られた本来の理由について考えさせ、「株式会社のかたちを取ることで何ができるようになるのか?」や「会社にとってどういうメリット(良いこと)やデメリット(良くないこと)があると思うか?」ということを話し合えるといいですね。

株式投資とは、将来性のある企業、良い商品やサービスを提供している企業を支援することによって利益(リターン)を得ることを意味しており、自分の資産形成にとっても意義がありますし、その会社に出資して資金面で応援するという楽しみや、会社を育てて、経済や社会の発展に寄与するという、社会的な意義ももっています。

出典:知るぽると「株式とは」(金融広報中央委員会)https://www.shiruporuto.jp/public/knowledge/assets/hyakka/part2/kabushiki/kabushiki001.html#a2

お金を増やす目的で株式を購入される場合も多いですが、企業の成長に期待して出資する、という当初の目的を忘れずにいることもとても大切ではないかと思います。

②投資信託

運用のプロにお金を任せ、国内外の株式や債券に投資をしてもらう金融商品です。

「どの株を買えばよいか分からない」という初心者でも始めやすいのが特徴で、近年はNISA(少額投資非課税制度)やジュニアNISAも注目されています。

【参考】【投資信託】今更聞けない金融商品の基本 → MY SCHOOL | マイスクール

メリット
・プロに運用を任せられる。
・自動的に分散投資になり、リスク分散ができる。
・少額(数千円)から始められる。

デメリット
・元本保証ではない。(解約のタイミングによっては損をする可能性もある)
・購入時、解約時に手数料がかかるものがある。

③保険商品

「変額保険」や「個人年金保険」などのことで、掛け捨てタイプの医療保険などとは異なる商品のことをいいます。

変額保険とは、支払った保険料を株式や債券などで運用し、運用実績に伴って受け取る保険金が増えたり減ったりする保険商品です。

個人年金保険とは、民間の保険会社の年金保険のことをいい、先ほどお話した公的年金とは異なります。公的年金は国民全員に加入する義務がありますが、個人年金保険は入りたいと思った人が自由に加入する物です。自分で保険会社を選べるので、支払う保険料や期間を決められる商品もあります。

メリット
・プロに運用を任せられる。
・保険料控除の対象になり、所得税や住民税の節税対策にもなる。
・変額保険の死亡保険金は最低保証額がある。

デメリット
・元本が保証されていない。

【参考】生命保険協会「保険の種類」https://www.seiho.or.jp/data/billboard/introduction/content06/

投資のために収支の確認

このような投資信託や保険などの元本保証のない「運用」に関しては、余裕資金で行うことが重要です。

日々の生活に必要な資金まで切り崩して「投資」に回してしまうと、生活が困難になってしまいますのでそこだけは充分に注意しましょう。

「毎月いくらまで投資に回せるのか?」を知るためにも、まずは毎月の収入と支出をチェックしてみることをオススメします。生命保険料や自動車保険料、スマホやインターネットの通信費や色々な年会費やサブスクなど、毎月必ず支払わなければいけない「固定費」の部分を見直すことで、そこから余裕資金に回せるお金が捻出できる場合があります。

例えば、スマホの料金プランや生命保険の見直し、電気やガスの会社を乗り換えたり、支払いを還元率の高いクレジットカードや電子マネーにまとめる、などお得になる方法は少し調べただけでも沢山あります。

お子さんの成長とともに家計の中身が変化していくのも子育て世代のひとつの特徴です。それぞれのご家庭に合わせて無理がないのが一番ですが、定期的に無駄な出費を見直していくことはとても重要です。

毎月の無駄な支出を見直して余裕資金にし、それを少額の投資信託などで積み立てていくこともできるかもしれません。無駄に払っていたお金が利益に姿を変わったとしたら、一石二鳥以上のメリットと言えますね。こうして見方を変えると、投資が意外と身近に感じられるのではないでしょうか。

また、「投資」と「投機」は違うということも、お子さんにしっかり学んで欲しいポイントです。投資を間違ってギャンブルのように捉えてしまうことは、お金の勉強とは真逆の結果になってしまいます。お金の大切さとありがたみを知り、お金を通して世の中のしくみを学ぶことに意義があるからです。

子どもと取り組む投資教育

日本では2022年度から高校の家庭科の授業で、資産形成について取り上げられることが決定しており、今後はご家族の方が子どもたちに投資教育をする機会が出てくることが想定されます。

「あまり堅苦しいお金の話をするのは抵抗があるなぁ・・・」というご家庭もあるかもしれません。そんな場合は金融庁のホームページで小学生向けに「うんこお金ドリル(生活編)」(うんこドリル×金融庁)が紹介されているので、一度お子さんに見せてみるのもいいかもしれませんね。その他にも、日銀による「にちぎん・キッズ」というお金の勉強に役立つ冊子がダウンロードできますのでご覧になってみて下さいね。

(金融庁ホームページ参照:https://www.fsa.go.jp/teach/shougakusei.html)

まとめ

いかがでしたでしょうか。先の見通せない世の中で、投資教育が今後いかに重要になっていくかをお伝えできていれば幸いです。

投資教育は、お金を儲けるためだけの勉強ではなく、お金を通じて社会のしくみを学ぶことでもあります。金融商品を通じて世の中のつながりを学び、企業活動や社会情勢への関心を高めることで、自分が将来描きたいキャリアデザインやライフプランが見えてきます。

大人になってから「もっと早く知りたかった」と後悔しないために、お金の知識や経済の仕組みを子どもの頃から学ぶことで、お子さん自身に生き抜く力をつけさせてあげることができます。経済感覚を養えるのは家庭での日頃からの会話や学びです。将来ビジネスパーソンとしても活躍できる土台作りでもあり、こうした積み重ねがお子さんが希望する未来を形作っていくことにも繋がるのです。

さらに、投資は長期運用が非常に重要なので、少しでも早いうちから始めることが重要です。 

金融庁 投資期間と複利の効果 https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/knowledge/basic/index.html

この記事をきっかけに、ご家族でお金や投資教育、資産形成について話してみて下さいね。それが漠然としたお金の不安をなくしていく第一歩にもなると思うからです。

最後に、日本で最初の株式会社については、坂本龍馬の亀山社中、日本資本主義の父・渋沢翁こと渋沢栄一が設立に関わった第一国立銀行(現・みずほ銀行)など、諸説あるようです。歴史が好きなご家族がいるご家庭では、お金の勉強と合わせて歴史についても話せる機会になると思いますので、夏休みの自由研究などにも活用してみて下さいね。

ひとつの事柄を色々な切り口から調べて知っていく、良い学びにもなりますよ。

Related Post