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オリンピックを色々な視点から見てみよう ~オリンピックと人権~

人権と密接に関係するオリンピック

コロナ禍で開催された東京オリンピックは、17日間の熱戦に終わりを告げました。

「平和の祭典」として開催されるオリンピックは、スポーツを通した人間育成と世界平和を究極の目的として始まったものであり、人権と密接な関係があります。

そこでこの記事では、オリンピックを人権という視点から解説していきます。

具体的には

・オリンピックの歴史とオリンピック憲章
・様々な人権問題とオリンピック

という順番でご紹介します。

この記事を読むことでオリンピックについて詳しくなり、色々な視点からオリンピックを楽しめるようになりますよ。

オリンピックの歴史とオリンピック憲章

オリンピックが人権と密接な関係にあることを説明するためにはオリンピックの歴史とオリンピック憲章についての解説が欠かせません。

(1)古代オリンピック
(2)オリンピズムをもとにした近代オリンピック
(3)オリンピック憲章が掲げる人権の尊重

という順番に解説していきますね。

(1)古代オリンピック

オリンピックは、紀元前8世紀頃に古代ギリシャのオリンピア地方で神様をたたえるお祭りとして始まったものでした。

その後ギリシャがローマ帝国の支配を受け、キリスト教がローマ帝国の国教と定められたことで、ギリシャの神をたたえるオリンピックは幕を下ろすことになりました。

これを古代オリンピックといいます。

現在の平和の祭典としてのオリンピック、いわゆる近代オリンピックが行われるようになるのは、それから1500年以上後のことです。

(2)オリンピズムをもとにした近代オリンピック

19世紀、フランスの教育家であったピエール・ド・クーベルタン男爵は「スポーツを通して心と体を成長させ、フェアプレーの精神などを育くみ、他国の選手と親しくなり、多様な文化に触れることで、平和な社会を実現しよう」と考え、オリンピックのあるべき姿としてオリンピズム(=オリンピック)精神を提唱しました。

そして1894年にパリで開催された国際会議で、オリンピックの復興と国際オリンピック委員会(IOC)の創設が決定し、オリンピックが復興することとなったのです。

これが近代オリンピックの始まりです。

古代オリンピックを近代オリンピックとして復興させたクーベルタン男爵は「近代オリンピックの父」と呼ばれるようになりました。

(3)オリンピック憲章がうたう人権の尊重

その後1908年には、IOCによりオリンピックのあり方や運営の仕方を定めた規約である「オリンピック憲章」が制定されました。

現在、オリンピック憲章の根本原則には次のように定められています。

『スポーツをすることは人権の一つである。すべての人はいかなる種類の差別を受けることなく、オリンピック精神に基づき、スポーツをする機会を与えられなければならない。オリンピック精神においては友情、連帯、フェアプレーの精神とともに相互理解が求められる。』

引用:オリンピック憲章
https://www.joc.or.jp/olympism/
https://www.joc.or.jp/olympism/charter/pdf/olympiccharter2020.pdf

このように、オリンピックの理念として人権の尊重がうたわれることになったのです。

様々な人権問題とオリンピック

オリンピック憲章により人権の尊重がうたわれるようになったオリンピックですが、実際には様々な人権問題を抱えていました。

ここでは、代表的なものとして

(1)人種差別問題とオリンピック
(2)女性の人権とオリンピック

の2点を解説していきます。

(1)人種差別問題とオリンピック

オリンピックにおける人種差別問題として有名な事件が「ブラックパワー・サリュート(黒人の力を示威する敬礼)」です。

1968年のメキシコ大会で起きた事件でした。

陸上男子200メートルで1位と3位になったアメリカの黒人選手2人が、黒人差別に抗議するために表彰台で国旗から顔を背け、黒い手袋を着けた拳を突き上げました。

国際オリンピック委員会(IOC)は、オリンピック憲章第50条に基づいて政治や宗教・人種的な意思表示を禁止していたため、2人はスポーツ界から追放されてしまいました。

また、2位のオーストラリアの白人選手も2人に同意したとして批判され、名誉を回復されないままこの世を去ってしまいます。

しかし、アメリカで起きた白人警官による黒人暴行死事件、いわゆる「Black Lives Matter」を機に、スポーツ界でも自由な意思表明を求める声が広がったことなどを受けて、IOCは東京オリンピックで適用するガイドラインで規制を一部緩和しました。

特定の国や人を標的にしないことなどを条件に、競技会場でも選手入場時や紹介時の表現行為が容認されたのです。

これにより、女子サッカーイギリス代表選手や日本代表選手などが、試合前のピッチ上で人種差別に抗議するという意味を持つ「膝を立てる行為」を行っている姿を目にすることになりました。

(2)女性の人権とオリンピック

今回の東京オリンピックは女性の参加率が48.8%となり、夏季大会では2012年ロンドン大会は44.2%,2016年リオ大会は45.6%であり、史上初のジェンダーバランスのとれたオリンピックとなりました。

参考:首相官邸ホームページ
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tokyo2020_suishin_honbu/pdf/20210308_gender.pdf

このように現在では女性も男性と同じように活躍できるようになりましたが、ここに来るまでには長い道のりがあったのです。

まず、1896 年の第1回アテネ大会では、女性は参加できませんでした。 

次に第2回パリ大会でテニスとゴルフが、第3回大会以降はアーチェリー等が加わりますが、多くの競技で女性の参加はなかなか認められないままでした。

女性の参加率が上昇してきたのは1970年代に入り、女性の権利を主張する運動が世界中で行われるようになってからのことです。

1979年には「女子差別撤廃条約」が、その後1994年にはスポーツのあらゆる分野での女性の参加を求めた「ブライトン宣言」が採択されたことにより、女性の競技数や参加数は更に上昇していくことになります。

そして、2012年のロンドン大会でボクシングに初めて女子種目が加わったことで、とうとう全ての競技で女性の参加が可能となったのです。

参考:男女共同参画局ホームページ
第1節 スポーツにおける女性の活躍 | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp)

まとめ

この記事では、オリンピックと人権の関係について

〇オリンピックの歴史とオリンピック憲章という観点から

・古代オリンピック
・オリンピズムをもとにした近代オリンピック
・オリンピック憲章がうたう人権の尊重

〇オリンピックに関わる様々な人権問題として

人種差別問題と人権の関係
・女性の人権とオリンピックの関係

を解説してきました。

オリンピックは平和を求めて始まったことや、人種差別問題、多くの種目で女性アスリートが活躍するまでには長い時間がかかったことに思いを馳せながらオリンピックを見ることで、今までとは違った角度からもオリンピックを見ることができるのではないでしょうか。

スポーツを習っているお子さんだけでなく、自国で開催されたことでオリンピックに興味を持たれたお子さんも多いと思います。

これを機に、オリンピックの歴史だけでなく、それぞれのスポーツ(種目)についても調べてみるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

また、メダリストだけでなく、オリンピアンの生い立ちや人物像を知ることで、多くの学びが得られるはずです。

諦めず粘り強く努力し続けるための工夫や、感情をコントロールする工夫についても学ぶことができ、子どもたち自身の「生きる力」を自ら身につける、良いきっかけになるでしょう。

この記事が、少しでも読んでくださった方のお役に立てたなら幸いです。


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