preloader

『比べる力』で差をつける【非認知能力とはNo.25】

ライバルに勝つために必要な『比べる力』

学校の成績・受験・就職活動・仕事と、子どもがこれから成長するにあたって多くのライバルたちが待ち受けています。

「できる限り、ライバルたちに勝てるよう我が子を育ててあげたい」と思うのは、自然に湧いてくる親心というものでしょう。

近年、IQと並んで注目されている非認知能力に『向上心』が含まれていることはご存知ですか?

実はこの向上心と深い関係のある『比べる力』を育ててあげることによって、子どもの未来のライバルたちに差をつけることが可能であるということが研究により分かってきました。

今回は、『比べる力』についてご紹介していきます。

社会的比較理論と『比べる力』

社会的比較は、人が自分の生きている環境に適応するために必要なものです。

わたしたちが普段から自分の容姿、持ち物、テストの結果などに対して一喜一憂し、優越感や劣等感を抱くのも、社会的比較からくるものであるといいます。

社会の中で共通して使いやすい価値基準は、お金など数値化できるものが中心ですが、そういったものさしで測ることのできないものほど、自分の位置を確認するための「比較対象」が必要になってくるわけですね。

それでは、人は一体どのように比較対象を選んでいるのでしょうか?

ここでの対象選びの判断力こそが『比べる力』なのです。

上手に「比べる」ことができれば、向上心が培われると同時に子どもの生きる力が伸びるとされています。

『社会的比較理論』の視点で詳しくみていきましょう!

『自己評価』と『自己強化』

社会的比較理論の研究によると、人が比較対象として選ぶのは、自分と同等に近い能力や評価を持っているものであることが多いとされています。

研究班の調査(出典:Festinger, L.(1954).A theory of social comparison processes. Human Relations)によると、これは自分のレベルに近いものと比較することによって、比較から得られる『自己評価』がより正確な値になるという安心感からくるようです。つまり、人は自己評価をするために社会的比較を実行するという考え方ですね。

この他にも人が社会的比較を行う理由に、『自己強化』があります。

こちらは、比較対象としてあえて自分よりも上位(能力などが高い人)や下位(自分の方が優れていると思う人)を選ぶことによって、自分を励ましたり自尊心を守ったりするものです。
心理学者たちは、これらを『上向きの比較』と『下向きの比較』に分類できるとして研究をすすめました。それでは、それら2つの違いを詳しくみていきましょう!

『上向きの比較』と『下向きの比較』

社会的比較理論の研究がすすむにつれて、比較の中でも自分よりも高い能力や評価を持った人と自らを比べる『上向きの比較』、その逆の『下向きの比較』の存在が明らかになってきました。

上向きの比較が人にもたらす効果は、「あの人に追いつきたい」「もっと頑張ろう」という前向きな気持ち、つまりは向上心の芽生えです。

上向きの比較をすることで、より上の目標に向かって自分を高めようというモチベーションに繋がるということですね。

向上心とモチベーションさえ続けば、子どもは挑戦を続けることができ、学業においても将来の仕事においても成功する可能性がぐっと高まるのです。

一方、『下向きの比較』ですが、これは上向きの比較とは真逆で、自分自身を自分よりも低い能力や評価を持つ人と比較することを指します。

心理学では、自信がない時にこの下向き比較をしがちであるとされていますが、これは自分よりも劣っている人をみることで『自己肯定感』を上げるために使われることもある一種の自己防衛とされています。

ただ、下向きの比較では残念ながら子どもの向上心は育ちません。

日頃から子どもが下向きの比較ではなく上向きの比較をすることが出来れば、「もっと上を目指そう!」「努力を惜しまず頑張ろう!」「どんどん挑戦していこう!」という向上心が伸びていくのです。

こうした気持ちで挑戦した先の成功体験は、失敗を恐れず何度でも挑戦しようという子どもの生きる力を大きく成長させます。

それでは最後に、『比べる力』を上手に身につけさせてあげるための、おうちで出来る実践方法をご紹介します。

おうちで『比べる力』と『向上心』を伸ばす!

前述の通り、ライバルに勝つためには向上心が欠かせません。

そんな向上心が育つよう、子どもが社会的比較をするうえで常に『上向きの比較』が出来るようにサポートしてあげることが大切になってきます。

ただし、社会的比較理論における『上向きの比較』には1つだけ注意点があり、それは自分よりも高すぎる能力を持つ人を比較対象にしてしまった場合、「全然追いつけない!」という自信喪失に繋がってしまうことです。

算数や国語といった学習においてもいえることですが、どんな問題を解くにも「情報を正確に把握すること」からはじめます。

つまり、子どもが上手に比較対象を選べるようになるために最初にすることは、「自分の持つ能力」を子ども自身に把握させてあげることです。

これは「いまのありのままの自分」と向き合うことでもあり、自己肯定感の醸成にも繋がるのです。

まずは、子どもの「得意なこと」を聞き出してあげることから始めましょう。

そして、それにまつわる「目標(能力値と合ったもの)」を親子で設定し、経過を見守ってあげて下さい。

目標に向かう過程で、子どもは「自分がどのくらいできるか」を把握し、少しずつ比べる力が育っていきます。

ただ、このときに比較することにばかり気を取られないよう注意する必要があります。

目標に近づくことももちろん大切ですが、失敗しても諦めず目標に向かい努力し続けることで「子どもの生きる力」が鍛えられていくという点が重要なのです。

そのためにはスモールステップで構わないので、たとえ失敗したとしても挑戦したことを褒め、励ましてあげましょう。

「何度失敗しても大丈夫」という安心感があることで、子どもの自己肯定感の土台が固まり、次の失敗を恐れずチャレンジし続けられる原動力になっていくのです。

そうすることで、子どもの自信に繋がり、自然と『下向きの比較』ではなく『上向きの比較』をする力が備わるでしょう。

やがて「目標」は本物のライバルへと変わります。

その日に備えて子どもの比べる力と向上心をしっかりと育て、未来のライバルに勝つための下地作りをはじめておきましょう!

Related Post