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【アメリカ・非認知能力で生き抜く多様な社会】

はじめに

アメリカのボストンに住む筆者が、日々感じる日本とアメリカの教育の違いや発見をつづります。今回は多様な価値観をもつ国、アメリカならではの教育についてです。

世界各国で国際化が進み、人種や民族に関する議論が深まる近年。また、LGBTQが広く認知され、セクシュアリティの認識が多様化する社会となっています。子どもたちの生きていく未来はもっといろいろな価値観が存在し、今からは想像もつかないような世界になっているかもしれません。

そんな社会に生きていくときに、他者を理解する力や理解してもらう(伝える)力は必ず重要な役割を果たしていくと考えられます。

ボストン近郊の教育現場では、どのようにこの多様性をとらえ、どう人種差別問題に向き合っているのかを以下の順にご紹介します。

・ボストンの人々が知っている「多様性の力」
・子どもが多様性を学ぶ機会
・非認知能力のスキルを身につけ、活かす


ボストンの人々が知っている「多様性の力」

ボストンのあるマサチューセッツ州の政府は「多様性に力あり」という考えにもとづいて、積極的な多文化共生政策を行っています。「多様性を否定することは、アメリカが衰退すること。」という考え方はきれいごとではなく、事実だと述べています。

そのことを私が知ったのは、マサチューセッツ州のサイトで発表されている移民に関するデータがきっかけでした。移民の人数や、その人たちによる納税の割合の高さを示すデータがわかりやすく掲載されています。

【参考】
What Immigrants means to Massachusetts: https://www.americanimmigrationcouncil.org/sites/default/files/infographics/massachusetts_infographic_2018.png
FACT SHEET Immigrants in Massachusetts: https://www.americanimmigrationcouncil.org/research/immigrants-in-massachusetts

これらのサイトには、州人口の16%を移民が占めていることや、経済力の高さのデータなどが掲載され、現在のアメリカを支える重要な一員であることがはっきりと示されています。

教育関係者にも移民であったり、2世や3世である人も多いです。優れた大学があつまるため、世界中から学生がやってきます。そこで学ぶ若者たちは他文化に寛容で、それらの大学を卒業した多くの教育者がこの地域で働いています。

アメリカ独立の舞台となった州ということもあり、もともと土地柄、移民が祖先という意識が高いこともあります。ここに住む人々の多くが、人種や価値観の「多様性が社会にとって大切だと知っている」のです。


子どもが多様性を学ぶ機会

では、子どもたちはどのようにして、多様性の大切さを知るのでしょうか。

ここ1~2年の間にも、起こり続けている人種差別の問題。BLM(ブラックライブズマター)やSTOPアジアンヘイトという言葉が再び声高に叫ばれています。子どもたちも日常的に目や耳にする言葉でした。

常にこれらの問題と向き合っているアメリカには、人々が歩んできた歴史や役割を認識しなおすための期間というのがあります。

例えば

2月にはアフリカ系アメリカ人 歴史月間
5月にはアジア・太平洋諸島系米国人文化遺産継承月間があります。

AMERICAN CENTER JAPANより: https://americancenterjapan.com/aboutusa/monthly-topics/1899/

アメリカ大使館公式マガジンより

これらの月には、メディアやオンライン、街のいたるところで関連する特集やイベントを目にします。

子どもたちの小学校でも、その民族や人種に関連する本の紹介やディスカッションのイベント、授業のメインテーマなどに設定されたりして関わってきます。また、家庭内での会話にも積極的に取り入れるようアドバイスをされました。

5月のアジア・太平洋諸島月間には、図書室にアジア系作家のセクションが設置され、リーディング専門の教師が読み聞かせも行います。また学年によっては、現在活躍するアジア系アメリカ人を招いて、講演会やパネルディスカッションも開催されました。

多様な人種が、どのような歴史を経て、アメリカや世界の進歩に貢献してきたかを知ることを目的とした期間です。


ある黒人男性の死によって、再度激しくなったBLMの運動。コロナウィルスの蔓延をきっかけに注目されるようになった、アジアンヘイトの問題。これらが発生したとき、教育現場を含めた社会の動きは素早いものでした。

小学校の校長先生や街の教育委員長は、すぐに全家庭向けのメールを配信し、自身の人種差別や問題についての考えを伝えました。クラスの担任もそれぞれが考えを示し、どのように子どもたちと問題に向き合うかということを、一度ならず発信してくれていました。

どの教育関係者も必ず「ささいなことでも、差別があれば報告するように。一緒に立ち向かうために私たちはいる。」ということを強調しています。

一般的な日本人として、人種差別というものはどこか遠い問題として人生の大半を過ごして来たように思います。

そんな私がこれらの動きを目の当たりにして知ったことは、しかるべき方法で声をあげることの大切さでした。出自や個性、価値観によって生まれる問題は間違いなく複雑です。それらに対応するには、非認知能力がもっとも必要とされるのは確実です。

公式な組織や、大人たちが意思表示することは、これらの問題への対応方法としての一つのスキルなのです。多様な価値観がひしめき合う環境に置かれているアメリカでは、当然身につけるべきスキルで、大人として最低限の責任と能力とも言えます。

非認知能力は数値で測れるものではありませんが、訓練をすることで非認知スキルは身につけることができます。


非認知能力のスキルを身につけ、活かす

これらは、私が一連の人種差別問題を通して、子どもたちに伝えていきたいと思ったことです。自分や他者の価値観や個性を伝えたり、受け入れたりするときに必要なことは二つ。

一つは、多様な社会は力を持ち、成長を加速させるものと知ること。

二つ目は、他者の言葉を理解しようと聞く耳を持つ人が多く存在していること。その存在を信じて、意思表示をすること。薄背景

一人の外国人として人種問題で揺れる国に身を置いてみて、心強い社会に支えられていることを実感しました。子どもの生きる力を育てたいと考えたとき、安心して相談できる存在や社会がいかに大切なのかと感じさせられます。

親は、一番最初に子どもの意思表示を受け止められる存在です。伝える力や受け入れる力を親子で鍛えていくことで、多様な変化にもしなやかに対応できる心が育つのではないでしょうか。



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