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アメリカの子どもは体験型教育で学ぶ【非認知能力とはNo.19】

お金の教育、アメリカと日本の違い【ベビーシッター編】

アメリカのボストンに住む筆者が、日々感じる、日本とアメリカの教育の違いをつづります。今回はお金の教育の一つ、ベビーシッターについてです。

子育てのなかで、子どもが仕事をしてお金をもらうということに、寛容なアメリカ。その方法は様々。家先でレモネード屋さんを開いたり、犬の散歩を代行したり。これらに並んで多くの子どもたちが体験する仕事の一つが、ベビーシッターです。

お国柄として、ベビーシッターを利用することが広く浸透しているのですが、これにはアメリカの法律が大きく関係しています。アメリカの多くの州では子どもだけを家や車においていくことは禁じられています。ほんの短い時間でも、通報により警察官がかけつけ、親は罰せられます。大人だけの用事があるときは、子どもをみていてくれる人を確保しないといけません。親がシッターさんに子どもたちを預けて、食事や仕事に出かけるシーンを映画やドラマで見たことがある方も多いのではないでしょうか。

子どもが子どもの面倒をみる!?

多くのシッター初心者は、自分の年下のきょうだいの面倒をみたり、近所の顔なじみの子どもの面倒をみることからスタートします。私がこちらに来て驚いたのは、シッターたちの年齢。身内の面倒であれば10歳(だいたい小学4年生)くらいから始めている子どももいるのです。

ボストンのあるマサチューセッツ州では、シッターの年齢に関する決まりはありません。私の住む街では、やはり10歳から参加可能なシッタートレーニングのクラスが開かれています。全米にあるアメリカ赤十字社でもクラスが開催されていて、こちらは11歳から受講可能となっています。シッターをするのに特別な資格はいらないのですが、基本的な応急処置や年齢別の発育・好きな遊びなどを学ぶことができるクラスです。

アメリカでは何歳になっても大学に通ったり、資格をとったりしてキャリアアップや転職をすることが普通です。私は大人に限って学びの機会が豊富だと思っていたのですが、そうではありませんでした。小中学生のころから、専門知識を身につけ、ビジネスに役立てる経験ができるのです。

お互いを守るために気をつけること

若い子たちが気持ちよくシッターの仕事ができるように、利用する親が安心できるように、安全対策は最も重要なことです。大人の都合だけで子どもにシッターをお願いするのは、もちろんいけません。シッターをする子の精神的、技術的な準備が整っていることがとても大切です。どんな仕事も、本人が興味を示して、やりたいと思って始めることなのです。お金の教育のはじめ時も、同じことだと私は思います。

先述したトレーニングクラスは、技量ややる気をはかる材料にもなると言われています。クラスを受けてみて、準備が不十分だと感じたら、大人が一緒に子どもの面倒をみることから始めます。きょうだいなどの面倒の手伝いをしながら、スキルを磨くことになるのです。

ベビーシッターを安全に活用するには、いくつかコツやポイントがあります。お願いする側も仕事を受ける側も安心できるように、下準備や利用時間に気を付けます。

例えば、シッター自身の年齢が若いうちは、自宅などの安全なところで、数十分程度の短時間を一緒に過ごしてもらうパターンが多いようです。高校生くらいになると、幼稚園や小学校へのお迎えや宿題の手伝いなど、仕事の内容も幅広く時間も長い場合もあります。

学生のベビーシッター文化は周囲の大人と仕事をする子ども、両方の心がまえと成長を、長い目でみていくお金の教育と言えます。取引の相手が若い子であっても、信頼して任せるという雰囲気は、子どものお金の教育にかかせない土台だと感じます。

私たちが取り入れられる方法

アメリカでは環境と土台がととのっている、シッター文化。この経験を通してこそできる、お金の教育をご紹介しました。

そもそもベビーシッター利用の少ない日本では、多くの方は小中学生にシッターをさせることに抵抗があると思います。特に身内でない家族との間でアクシデントが起きることは、絶対に避けたいですよね。

こちらに住む我が家でも、お隣の高校生にお願いしたことはありますが、自分の子どもがシッターをする側になったことはまだありません。

人の面倒をみる仕事は、安全第一の、責任がともなう仕事なので、やり遂げたときの経験値と達成感は大きなメリットです。是非お金の教育に取り入れたい方法ではあります。

短時間家族や親戚の面倒をみること、またはおじいちゃんやおばあちゃんの話し相手になること、そこから始めてみるのはどうでしょうか。事前準備と安全に配慮はかかせませんが、シッター中に大人は干渉せず、きちんと報酬を支払うことで立派なお金の教育になります。

我が家には、今年新生児が誕生の予定で、人のお世話をすること、いたわることがどんなことか、親子で一緒に学びたいと考えています。来たるその時のために役立つかな、と思い最近こんなことを始めました。

『じーじ・ばーば 健康&ご機嫌チェック』です。長男・長女(9歳と7歳)にお願いしています。毎朝学校が始まる前に、日本に住む私の両親にテレビ電話で連絡をする仕事です。日本は夜の時間帯。その日一日どんな気分だったか、何を食べたかなど、5分から10分ほどおしゃべりしてもらいます。

電話のあと、子どもたちは私に報告をしてくれるので、報酬を支払います。その後内容について話し合うこともあります。

例えば「今日はおじいちゃん、早起きしすぎて、もう眠いんだって。」と報告があれば、快眠に良い方法を一緒に調べたり考えたりします。自分がよく眠れる方法をアドバイスしたりして、祖父母のことを気づかう子どもたちの様子から、責任感をもって取り組んでいるのが伝わってきます。

親子で養う、生きる力

祖父母と孫のやりとりを見ていて、人と接する仕事には、総合的な能力が必要だと親も気づきました。スキルや知識と同時に、非認知能力(テストでは測れない能力)が必要です。

今我が子たちには、人に伝わりやすい話し方を気にかけ、相手が何を求めているのかを感じ取るつもりがあります。自分が努力をしなくても、くみ取ってくれる相手だけでない。

仕事なのだから自分に責任がある、という意識が芽生え始めたところです。

非認知能力は教えようと思っても、言葉で伝わりづらいもの。より多くの経験をさせると、親も子も学びのチャンスが広がっていくと感じます。


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