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活字離れがすすむ中で【非認知能力とはNo.21】

日本とアメリカの教育の違い 読書編

アメリカのボストンに住む筆者が、日々感じる、日本とアメリカの教育の違いをつづります。

今回は読書についてです。

若者の活字離れが進んでいるという話は日本でよく耳にしますが、アメリカも例外ではありません。

文科省の研究によると、読書量に関する日本の高校生への調査ではいくつかの傾向が見られました。読書量の少ない理由の一つとして、「もともとあまり本を読まない」というものがあります。研究報告では、これに対して「小中学生のうちから読書習慣をつけることが必要」と示しています。

【参考】https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/040/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2017/08/15/1389071_005.pdf

我が子たちの通うアメリカの小学校でも、子どものうちから読書習慣をつけることには注力されています。

そのアプローチは、日本の小学校教育と少し異なる特徴があります。日本の小学校では多くの場合、教科書を丁寧に読み込む「精読」というアプローチがとられています。国語の教科書の文章をしっかり読み、文章を深く理解することを目指す方法です。作者の真意や登場人物の気持ちなどを、じっくり考察する授業方法がとられていると思います。理解を深めるために、毎日教科書を音読する宿題が出ている小学生も多いのではないでしょうか。

一方こちらでは「多読」に重きをおいていて、色々な本を自分で選んで、たくさん読むようにうながされます。国語の教科書は存在せず、リーディングの授業では一般書を使って授業が行われます。息子のクラスでは、小学4年生で200ページ以上あるものを、年に3~4冊読み終えるカリキュラムでした。また、毎日の宿題として「最低20分以上の読書をする」ことが広く取り入れられていますが、本の種類にしばりはありません。

多読によるメリットは幅広く、語彙力の強化や想像力・ライティング能力の向上など、既に多くの研究で立証されているため、この方法が積極的に導入されているのだと思います。

【参考】https://files.eric.ed.gov/fulltext/EJ1179114.pdf

多読をうながす方法として、小学校で取り入れられている教材が豊富なのも、こちらのリーディング教育の特徴です。

多読の入口は読書を好きになること

多読をうながす教育の一つ目の材料は、難易度別の紙の本です。子どもたちは図書室や教室で、好きな本をジャンルを問わず選んで読みます。小学校低学年の子どもが読む本の多くには、レベルが表記されています。ある出版社のレベル例は以下のようなものです。


レベル1:読書への準備 アルファベットを覚えていて、読書に興味を持ち始めたレベル(幼稚園児)
レベル2:手助けがあれば読める 日常的に使う単語は読めて、新しい単語も手助けがあれば読めるレベル(幼稚園~小学1年生)
レベル3:自分一人で読める 登場人物を理解し、物語のあらすじを理解できる(小学1年生~3年生)
レベル4:段落のある文章を読める シンプルな文章なら自信をもって読める(小学2年生~3年生)
レベル5:チャプターブックへの準備 より長い文章や段落のある文章を読めるが、まだカラフルな挿絵のある本が好きな子向け(小学2年生~4年生)


レベル1や2などは大きな文字で簡単な言葉で書かれたもので、ページの大部分は挿絵です。レベルが上がるにつれ、文章が長くなり、単語の難易度が高くなり語彙も増えます。

子どもたちは自分のレベルに合ったものか、少し上のものの中から好きな本を選びます。レベルは、学校に配置されているリーディング専門の先生や担任の先生がはかり、アドバイスをします。我が子たちによると、先生から定期的に個人に合ったレベル上げの提案をされ、次のレベルへ進むタイミングもわかりやすいそうです。

もう一つの特徴的な教材は、電子書籍アプリです。

iPadやパソコンなどのデバイスを使い、読書をする方法です。コロナの影響が出始める前から、子どもたちの通う小学校ではアプリは高い頻度で使われていました。各児童に個人のアカウントが登録されており、先生は子どもごとの読書量や内容をトラックできるのです。

このようなアプリの優れている点はいくつかありますが、一つは読み聞かせ機能だと感じます。大人が読み聞かせするのと同じように、読み上げの音声がつくものです。カラオケの歌詞字幕のように読まれている部分の色が変わるので、目でも追いやすいのが特徴です。

もう一つの優れた点は、子どもの読書傾向や好みから、おすすめの本を紹介してくれる本棚機能です。読書を習慣としない子どもの多くは、本の選び方がわからないと言います。適正な難易度や興味のあるポイントをおさえた本を紹介してくれるのは、読書へのハードルをひとつ取り払ってくれると感じます。

この一年間、コロナによるオンライン授業で、電子書籍アプリを使う時間は増えました。その効果からか、我が家の子どもたちの読書習慣は飛躍的に向上しました。読み上げ機能のない本も、おすすめされた本から選ぶと、スムーズに読みこなすことができるようになっています。

紙の本とアプリを使う読書、どちらでも大事にされていると感じるのは、本を嫌いにならないこと。無理に難しい本を読もうとせず、自分が読みたいものを楽しみ、好きになることが読書を習慣づけると考えられているのです。

多読に使えるコンテンツは色々ある

現在は、日本でも多くの図書館で電子書籍の貸出サービスが利用可能なようです。多読というアプローチで読書習慣を身につけるには、便利な方法だと思います。お子さんに読み聞かせの時間をなかなかとれないお父さん、お母さんも、読み上げ機能や動画サイトの読み聞かせ動画などを上手に利用してみてはいかがでしょうか。


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