はじめに
皆さんは「クリティカルシンキング」という言葉を聞いたことがありますか?
文部科学省の新学習要項の解説パンフレットには「物事を多様な観点から考察する力」と記載されていますが、日本語では「批判的思考」と訳されることが多いようです。
これからの社会を生きる子どもたちは「生きる力」を伸ばしていく必要があることは今までもお伝えしてきましたが、この「批判的思考」も「生きる力」を伸ばしていくうえで大切な能力です。
詳細は後述しますが、これから更に不確実性が高まる時代では、「自分の頭で考え、最適解を出せる力」が必要になるからです。
日本の学校教育でも批判的思考の重要性を認識し、これを教えることに取り組んではいるものの、そこまで時間を割けていない現状のようです。
OECDの国際教員調査TALIS 2018では,「授業において批判的に考える必要がある課題を与える」と回答した割合が中学校では12.6%、これは参加48か国平均の61.0%と約5倍の差があるのです。(小学校でもほとんど変わらない11.6%と回答されています。)
OECD国際教員指導環境調査TALIS 2018報告書(2020/11/2参照)
https://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2019/06/19/1418199_2.pdf
そうであるならば、この「批判的思考」は、私たち親が子どもに教えていかなければいけないものになるでしょう。
批判的思考ってなに?
批判的思考とは「物事を多様な観点から考察する力」とお伝えしましたが、簡単に言えば、「?」をつけて考え続けることです。
与えられた情報や他人の意見に対して、
- 「なんで?」「それって本当?」と興味や疑問を持ち、
- 思い込みや偏見を排除して、証拠を調べる
- 自分なりに最適な答えを出すけれども、他の可能性も考え続ける(1に戻る)
かなりざっくりではありますが、これが批判的思考と呼ばれるものです。
関連するものでロジカルシンキング(=論理的思考)がありますが、これは根拠や前提条件を整理して、矛盾が起こらないように正しく筋を通して考える思考法のことです。
批判的思考がなぜ大切かと言えば、この論理的思考だけでは、前提条件が間違っていれば、間違った結論になる可能性があるからです。
クイーンズランド大学で批判的思考の指導を行うピーター・エラートン氏によれば、批判的思考に関する授業を1年間受講した生徒は「成績が向上し、試験の結果も良くなるという結果がみられた」と述べており、学校の成績にもプラスの影響を及ぼす可能性もあるかもしれません。
どうやったら批判的思考が身につくの?
では、ご家庭でどうやったら批判的思考が身につくのでしょうか?
それは、子どもの「なぜ?」を大切にしてあげることと、親である私たちも質問を投げかけてあげること、この2つが大切です。
子どもは3歳くらいから、「なぜ?」という質問を大量に発しますよね。
ふとしたことを疑問に思い、親である私たちにぶつけてきますが、時には私たちが思いもよらなかったものだったりするという経験がある方も多いでしょう。
この何気ない会話が、批判的思考を鍛えるトレーニングになります。
例えば筆者の経験では「なぜ赤信号が止まれなのか?」を質問されたことがあります。
なるほど、確かに赤が止まれと決まってはいるものの、他の色でも良いですよね。
色には波長があり、この長さが長いほど人間はその色に気がつきやすくなるという理由で赤色が採用されているようですが、必ずしもこの答えに行きつく必要はありません。
そして、私たち親も「もし他の色だったら・・・?」「なぜそう思うの?」などの質問を織り交ぜて、子どもと一緒に考え続けることがトレーニングになります。
まとめ
批判的思考は、誰もが身につけることができるものです。
しかしそれには親である私たちが、子どもの「なぜ?」を尊重し、子どもに「問い続けることによって物事の本質に近づいていくこと」を、経験させなければいけません。
子どもの「なぜ?」を受け止めたり、子どもに「なぜ?」を投げかけるという簡単なものではありますが、時間に追われていたり、毎回毎回だとこちらが疲れてきてしまうこともあるでしょう。
時間がかかるトレーニングですから、できないときがあっても問題ありません。
無理なく出来る範囲で、子どもとの会話を楽しんでやってみてくださいね。