Contents
コーチングは子育ての救世主!
子育てには正解がないからこそ「どうしたら上手に子育てができるだろう?」と悩まないママやパパはきっといないでしょう。
今回は、そんな悩みを解決してくれる救世主ともいえる『子育てコーチング』についてご紹介します。
子育てに驚くべき効果をもたらすとされているコーチング。セミナーや専門の本が存在することから、取っつきにくいと感じてしまう方もいるかもしれません。
でも、大丈夫です!特別な資格や準備はまったく必要ありません。知識さえあればすぐにでも始められるので、ぜひ最後までお付き合いください。
まずは『コーチング』が一体どういうものかについてご紹介していきます。
アメリカ発のコーチング!
コーチングは、「教える」のではなく「引き出す」技法のことをいいます。
コーチングの歴史は古く、ルーツは1960年代のアメリカまで遡(さかのぼ)ります。当時のアメリカは戦争中だったこともあり、「人間の生きる力」をなんとか取り戻そうと心理学者たちがチームを組んで研究をはじめたことがきっかけでした。
・人は豊かな可能性を自身の中に秘めている
・人が持つ可能性は引き出す手助けが必要である
これら2つの考えを軸に専門家たちによってさまざまな研究が行われ、コーチングの技法は洗練されていきました。日本でも2000年代ごろからビジネス畑を中心に普及していくこととなります。
博士が認めた教育面でのコーチング!
最初はビジネスマンの育成に活用されてきたコーチングですが、この技法が「ビジネスの分野に限らず、教育をはじめとした幅広い人生のシーンに有効である」とロンドンにあるフィールド大学院大学の『レニ・ワイルドフラワー博士』が唱えたことにより、コーチングはあらゆる分野で活躍するようになりました。
こうして世界に羽ばたいたコーチング技法は「子育てにおいても非常に有効である」とされ、教育業界からも大きな注目を浴びることとなりました。
続きましては、子育てコーチングによって子どもにもたらされる驚くべき効果についてご紹介します。
コーチングで伸びる非認知能力!
子育てコーチングの素晴らしさは、子どもの『非認知能力』を伸ばせる点にあります。
非認知能力というと聞き慣れない言葉かもしれませんが、IQ、記憶力、理解力、語彙力などテストで計測できる能力とは異なる、数字にはしにくい人生にとって大事な能力のことを指します。
例えば、非認知能力として下記のようなものがあげられます。
・他人に対する優しさや他人とうまくコミュニケーションをとる能力
・自分の感情とうまく付き合う能力
・自分を肯定する能力
・目標に向かって努力する能力
これらは全てすぐに育つものではなく、人生のもっと後になって現れてくるため「あと伸びする力」とも呼ばれています。
認知能力が人が持つさまざまな『性能』だとすると、非認知能力はそれを上手に『運用する能力』ですが、あらゆる研究によってこの非認知能力は特に子ども時代に培われることが明らかになりました。
子どもは、自分たちが最初に出会う大人のとる態度を、これからの人生で「他者と付き合う時のお手本」にします。その最初に出会う大人は多くの場合は自らの親であることから、子どもは親の言動を基準にしていくということがわかります。
親がじっくりと忍耐強く子どもに向き合い、考えを尊重する態度をみせることで、子どもは「自分が愛されていること」「人は信じるに値すること」を学ぶのです。
東京大学教育学研究科の遠藤利彦教授は、こういった信頼感が『非認知能力の基礎』となっていることを提唱しています。
世界で注目される非認知能力!
非認知能力はいま、世界から注目を浴びています。
これまで西洋を中心に「学力」を重視した教育がなされてきましたが、「それだけでは人間関係などが複雑化した現代社会を生き抜くことは難しいのでは?」と懸念する親が増えたことが、非認知能力への関心の高まりに繋がったとされています。
この非認知能力の認知に大きな貢献をした社会実験があります。
『ペリー・プレスクール・プロジェクト』と呼ばれるその実験は、アメリカの心理学者であるワイカート氏を中心とした研究グループによって、1962年から1967年にかけて未就学児を対象に行われました。
実験に参加した123名は、3歳および4歳で、IQが70-85の貧困層に属すアフリカ系アメリカ人たちでした。実験では、少人数制での学習時間を毎日2時間半ほど提供され、毎週のように1.5時間もの家庭訪問が行われました。
そして、研究者たちがこれらのプログラムを受けた子どもたちと、受けていない子どもたちの差を数十年に渡って測定し続け、「プログラムを受けた子どもたちは、受けていない子どもたちよりも学歴が高く安定した収入を得ている。また、犯罪率なども低い」という結論を出したのです。
注目されたのは、プログラムを受けた子どもたちの「IQ」の数値の伸びはすぐに頭打ちになり、プログラムを受けていない子どもたちと学力面ではさほど差がみられなかったという点でした。
学力では計り知れないものは「非認知能力」と呼ばれ、質の高い幼児教育に必要なものとして世界に知れ渡ることとなりました。
それでは、ここからは「子育てコーチング」に焦点を絞ってご紹介していきます。
コーチングの考え方を知る!
コーチングをはじめるまえに重要なのは、コーチングの考え方を知ることです。
コーチングは、「人は答えをすでに自分の中に持っている」という考えを持つことからスタートします。自分の外から与えられた答えはただの情報に過ぎないので、あくまでも自分の中から出てくる答え、つまりは『納得感(なっとくかん)』を大切にします。
「外からの情報と内に潜む答えが繋がったときに、その人自身の答えが作り出される」
この考えが根底にあることを意識することが、コーチング技法を取得するための鍵です。逆にこれさえ忘れなければ、スムーズに行うことができるといえます。
もっとも大事なのは「情報を伝える」のではなく「相手の中に潜む答えを見つけてあげること」です。
これを踏まえた上で、実際にどのようにコーチングを子育てに取り入れるかをみていきましょう。
実際に子育てコーチングをはじめてみましょう!
子育てコーチングでは、お子さんに「教える」のではなく、お子さんの中にある答えを「引き出す」お手伝いをしてあげます。
お子さんに「あれをしなさい!」「これをしてはダメ!」と毎日繰り返すことに疲れてしまっている親御さんは多いと思います。親心から放つ自分の言葉が聞き流されてしまうことに徒労感(とろうかん)すら感じる日があるかもしれません。
コーチングではお子さんにあれこれ教える代わりに、「なぜそれをしなければならないのか」を自分で考えさせてあげます。
そうすることによって、「親がしてほしいこと=外からの答え」と「子どもの納得」がくっついて、お子さんの「理想的な行動」に繋がっていくのです。
そのためには、とにかく「聞いてあげること」が大切です。
子どもは自分の気持ちや考えを上手に表現することに慣れていません。そのため、親の方がついつい先回りをしてあれこれ言ってしまいがちです。
子育てコーチングでは、先回りしたい気持ちを一旦グッと堪えて、まずはこちらがしてほしいことを伝え、あとはじっくりと子どもの声に耳を傾けてあげます。
また、お子さん自身が自分の考えを整理するために色々な質問をしてあげることもコーチングでは重要です。
ここで注意点は、「いるの?いらないの?」「やるの?やらないの?」といった『はい』か『いいえ』でしか答えられない質問は極力しないことです。
こういった質問はクローズドクエスチョンと呼ばれ、コーチングにおいてはNGとされています。
そういった質問の代わりに、「どうしてやらないの?」「どうしたかったの?」などの、子ども自身が考えて返答しなければならない質問(オープンクエスチョン)をしてあげます。
子どもは問いかけに答えようとする過程で、「自分はこれがいやだったんだ」「こう言う風に考えられるかも」と、自分に対する様々な気づきを得ることができます。
これを繰り返すことで、やがて子どもが自分自身で考える力が伸びてきます。
そして何か困難が起きても、子どもはまず「自分はどうしたいのか」「どうすればいいのか」を考えるようになります。
ここまでくれば、あとはそっと見守ってあげましょう。どこかでつまづいているようであれば、優しく質問してお子さんが「考える」サポートをしてあげて下さい。
お子さんは自力で答えを見出し続けるうちに、「自分は困難を解決する力があるんだ!」と気づき、さらなる自信に繋がっていきます。
子育てコーチングのコツ!
コーチングを子育てに上手に取り入れるコツは、子どもの中にある答えを導き出すまで根気よく付き合ってあげることです。
子育てコーチングをはじめられる時には、まずはお子さんが安心してあなたを頼れるように、普段からお子さんが相談しやすい関係性を作ることが大切です。
そして、お子さんが自分で考えるようになったら、できるだけお子さんの興味や疑問を尊重してあげて下さい。お子さんがやり遂げた時には一緒に喜び、あるいは失敗してしまったら「どうすれば良いか」を一緒に考えてあげましょう。
そうすることで、お子さんに『あなたのそばにちゃんといるよ』というメッセージが伝わり、お子さんも安心して自分の中にある答えを探ることができるのです。
お子さんが内に秘めたものを引き出してあげるコーチングを、是非あなたの「理想の子育て」にご活用下さい!
参考資料
日本コーチ連盟公式HP 「コーチングとは」
https://www.coachfederation.jp/ca/coaching/
フィルディング大学院大学公式HP レニワイルドフラワー非常勤教授「エサレン研究所とジョンウィットモアがコーチングに与えた影響」2017
https://www.fielding.edu/news/how-esalen-john-whitmore-influenced-coaching/
ふじのーと公式HP 「子どもがより豊かな⼈⽣を過ごすためにパパ、ママが知っておきたいこと」
https://www.yamanashibank.co.jp/fuji_note/life/post_1406.html
東京都府中市発行令和2年度版「子育てのたまて箱 特集:おしえて!汐見先生
https://www.city.fuchu.tokyo.jp/kosodate/shussan/info/tamatebako.files/2020siomi.pdf
国立教育政策研究所・東京大学教育学研究科 遠藤利彦教授「非認知的(社会情緒的)能力の発達と科学的検討手法についての研究に関する報告書」2017
https://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/pdf_seika/h28a/syocyu-2-1_a.pdf