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驚きの体験型教育 in アメリカ【非認知能力とはNo.15】

アメリカと日本の教育の違い【お金の教育】

アメリカのボストンに住む筆者が、日々感じる、日本とアメリカの教育の違いをつづります。
今回は金融教育についてです。

日本とアメリカの間だけでなく、国が違えば人々のお金への関わり方には様々な違いがあります。大人の持つ感覚が違えば、もちろん若い世代へのお金に関する教育にも違いが生まれます。

みなさんは、子どもにどのようにお金の話をしていますか?お金に興味を持ったとき、どうアプローチすると楽しく、わかりやすく伝えられるのでしょうか。金融教育はきっと大事なことだけれど、何から手をつければいいのかわからない。私はそう感じていました。

そんな折に私がアメリカで出会った考え方は新鮮で、現在とても役立っています。みなさんにも金融教育のきっかけとして、ヒントにしていただけるかもしれません。

アメリカのお金の教育、どう違うの?

日本とアメリカでのお金に関する教育の大きな違いは『お金を稼ぐ体験の身近さ』です。

我が家には現地校に通う小学生が二人います。子どもたちの通う学校では、お金に関する授業は特別行われていません。お金の教育のカリキュラムがあって、小学生が投資やローンについて先生から習う、ということはありません。

それでも、こちらに暮らす子どもたちへのお金の勉強は身近で、日本とは大きく違うと感じます。驚くことに、その教育方法はなんと『お金を稼ぐ』実体験を通して行うものなのです。

子どもがお金を稼ぐ?そんなことしていいの?と思いますよね。

こんな印象的なエピソードがあります。ある雪が降る日のことです。職場の同僚たちと、家の周りの雪かきについて話していた時でした。一人の同僚が「うちは子どもたちに雪かきさせるから、楽だよー。」と言いました。他の人たちはいっせいに「いいね!大体いくらでやってくれるの?」と聞きます。その質問に対して彼は「・・・。」言葉を濁して苦笑い。

苦笑いのわけは、子どもたちにいくらも払っていないことに気づいて、恥ずかしいと思ったから。
それはそれは気まずい表情でした。

この時に「相手が子どもであっても、労働には対価が発生する」という感覚をアメリカ人の多くが持っていることを知りました。私がそれまで持っていた「お手伝い」の感覚とはだいぶ違うもので、驚きました。

このような大人たちの考え方によって、子どもが報酬のあるしごとに挑戦できる土台があるのです。
実際、お金をかせいでみようとする子は身近に多くいます。よくある方法では自家製レモネードを家先で売ったり、近所の家々を回って落ち葉の掃除を請けたりするなどの方法です。初めは大人と相談や計画をして、できることからチャレンジしているみたいです。

また、SNSの地元のページや街のオンライン掲示板にも色々な投稿があります。
例えば「我が家の小学生が今週末一台〇ドルで洗車をします。みなさん来てくださいね。」や「犬の散歩をうちの娘が代行したがっています。金額は概ね〇〇ドルです。ご相談を!」などです。

サイトへの投稿は、小学生などの場合は保護者が本人の代わりにしてあげていることがほとんどで、地元の利用者もこのような機会を喜んで利用している雰囲気があります。

「自分が提供できるサービスを仕事にする」ことを、子どものころから経験できる環境であるのがわかります。それは、周りの大人たちが進んでサポートしているからなんですね。

これこそが日本とアメリカにおけるお金の勉強の最初の一歩の大きな違いなのではないでしょうか?

体験型教育の取り入れ方

では、このような環境がなければお金の勉強はできないのでしょうか?
地域や周りの大人を巻き込んで、実体験をさせるのはとても大変なことです。こちらに暮らしている私と子どもにでさえ、そのハードルは高く感じられます。

日本でもどこでも出来るアイデアの一つとして、我が家のこんな方法はどうでしょう。その名も『おしごと』です。これは、日本のお手伝いとアメリカの労働報酬の考え方を合わせたハイブリット方式です。

我が家流『おしごと』は次のような流れになっています。内容は雪かき、洗濯、ご飯を炊くなど色々です。

例【家の外までごみを捨てにいくしごと】

はじめに、子どもにしごとのオファーをします。(彼らから、しごとを求めてくることも多いです。)

その時のごみの量や、外の天候などを考慮して報酬を提示。量が多かったり、外がとても寒い時の提示額は上がります。

子ども側は他の用事(勉強や遊び)の忙しさを考えて報酬交渉をしてきたりもします。

お互いが納得する内容で交渉成立!

完了報告をもって、報酬支払い。

ちなみに、報酬は現金ではなくシールで払っています。一枚あたり1ドルの価値ということにしています。

シールを用いている理由は、日本よりもクレジットカード社会のアメリカで、現金を使う場面がとても少ないからです。お金を貯めても、欲しいものがオンラインでしか買えなかったり、現金を受け付けていないお店も多くあります。親自身も現金を手元に持ち合わせていないことが多く、おしごと完了のたびに支払うことができません。すぐに報酬を受け取れる方が、子どもたちは満足顔で達成感が伝わってきます。

シールの使い方は、集めた分の価値と同等のものを、親が代理で買うことにしています。使い道は基本的に自由です。無駄な買い物をしてしまうこともありますが、その後悔は本人たちがいちばん強く感じるものです。働いてコツコツ貯めたお金を、どう使うのか、真剣に考える練習になっています。

この方法を取り入れるときに、考えておきたい大事なことがもう一つ。親が日々やっている家事という労働に対価はあるのか?ということ。

子どもには労働が報酬を生むことを伝えながら「私は家族のために無償で家事をやっている。」と思っていませんか?家庭に入ってくる外からの収入は、暮らす人がとる食事や住環境の充実によって保たれていて、それを叶えているのは日々の家事なのです。この考え方も、私がこちらのママ友たちから受け取った感覚です。

子どもに説明するときに説得力をもたせるためにも、家事は収入を伴う労働なのだという自負を親がもつことが大事ですよね。

親子で一緒にお金のことを学びたい

金融について子どもに伝えたいと思ったら、興味を示したタイミングでお金に触れるチャンスを作ってあげること。その環境を整え、導いてあげるために私たち親にできることは、興味をもって一緒に学んでいくこと。子どもの経済活動は小さなところから始まりますが、世界が広がる大事な一歩。親の世界もきっと広がります。弊社もこの9月に、「学校では教わらない お金の勉強」というセミナーを東京メトロと共同開催します。お金の勉強は難しいイメージがありますが、まず一歩目を踏み出してみてはいかがでしょうか?


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